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【CROSS OVER Vol.6 青山学院大学 若林宏樹選手】人生の中で今年しか実現できない夢。

武岡優斗です。元Jリーガーで、現在はセルソースで働いています(僕に関する記事はこちら)。そんな僕が、セルソースと縁のあるアスリートにインタビュ―していく企画「CROSS OVER」。

本企画の第6弾は、青山学院大学に所属している若林宏樹選手。
 
大学1年生の時の第98回箱根駅伝で一躍有名になった若林選手。山が好きで「山の神になることが夢」と話す若林選手にインタビューしてきました。ぜひ最後までご一読ください。

若林 宏樹|Hiroki Wakabayashi
2002年9月3日 和歌山県生まれ。
海南市立下津第二中学校から陸上競技部に所属。高校は、洛南高等学校に進学。青山学院大学に進学後、第98回箱根駅伝(2022年)では、1年生ながら山登りの区間である5区に出走し区間3位となる。第100回箱根駅伝(2024年)でも5区に出走。従来の区間記録を上回る69分32秒で区間2位となり、青山学院大学の2年ぶりの完全優勝と、往路記録・総合記録の更新に大きく貢献した。

「勝つ」のが楽しくて「勝てる」のが長距離だった。

――若林選手が長距離ランナーになったきっかけを聞かせてください。
 
小学校のマラソン大会でなぜかよく優勝していたんですよ(笑)。それを見ていた陸上部所属の姉が「陸上部に入らない?入って欲しいんだけど」と言ってきたので、とりあえず入ったという感じです!
 
なので、きっかけは「お姉ちゃんに言われたから」ですね(笑)。
 
「走るのが楽しい!」というのはもちろんありましたし、何より「勝つ」のが楽しくて「勝てる」のが長距離だったというのがありますね!!

箱根の山でしか感じられないものがある

ーー僕としては「青山学院大学(以下、青学)と言えば若林選手」のイメージが強いですが、青学に入学された経緯を聞かせてください。

高校時代から「箱根を目指したい!」、特に「山登りの5区を走りたい!」という想いが強くありました。そんな中、青学の原監督から「5区を目指してみないか?」と声を掛けていただくことができ、入学を決めました。

ーーもともと登りが得意だったのですか。

地元が和歌山の田舎のほうだったので小学校の頃からよく山で走ることが多かったんですよ!山に囲まれたド田舎で(笑)。

走った後の達成感が凄くて、山でしか感じられないものがあります。もちろん苦しいですが、同じ距離を走るとしたら山の方が楽しいです。
 
――走ってる最中はどんなことを考えてるんですか?

実は、今年(2024年)の箱根はかなり考えて走っていました。5区はカーブが多く、最短コースを走る必要があるのですが、今回は雨の中でのレースでした。

滑らないことや観客の方が差している傘にぶつからないことを意識したり。その上で身体のコンディションをイメージしながら「今何%の力を使っている」とか「ここでペースを落とすか、落とさないか」といったことを考える必要がありました。
 
5区は後半にどれだけ体力を残せるかが重要なので、残りの距離とコースをイメージするのも大事で「どんな起伏が待ってるのか」「平地があるのか」といったことも考えていました。トラックの試合ではこんなに考えることはないですね。

楽しみ半分、不安半分

――初めて走られた箱根駅伝(2022年第98回大会)についても聞かせてください。1年生ながら区間3位でしたよね。走る前、レース中、そして走り終えた後、どんなことを想いましたか?

走る前は「楽しみ半分、不安半分」でした。箱根を走るのが夢で、中学生からの目標だったのでそれを達成できるというというのは楽しみでした。その反面、「優勝できる」という周囲からのプレッシャーを感じていたので、不安ももちろんありました。

いざ走ると、4区までのメンバーが後続と1分差のトップで来てくれたこともあり、レース中はただただ楽しい70分でした。

走った後は「1回走るだけでこんなに反響があるんだ!」といったことを感じました。

自分の中に生まれた「責任感」

――2年生の時の箱根駅伝についてお聞きします。2年連続5区で登録された中、直前に体調不調で控え選手と交代となり悔しい想いをされたと思います。この大会について率直な気持ちを聞かせてください。
 
プレッシャーを感じるというか「自信がなかった」というのが大きいです。

1年目は年間を通して練習が出来たのですが、2年目は8月に3か所疲労骨折をしてしまったんです。しかも「踵の部分」なので歩けもせず・・・。

その状態が1カ月半続き、10月頃からようやくウォーキングとジョギングが出来るようになり、その後追い込み練習を再開しました。「2連覇が掛かっている」「勝てる」と言われてる中で走るとなると、自信がないからこそプレッシャーに感じてしまって、夜眠れない状態になってしまいました。
 
――控え選手と交代することを自ら申し出たという情報を目にしました。その決断はかなり苦しく辛かったのではないですか?

自分よりも他の選手の方が1年間しっかり練習を継続出来ていたので、任せた方がいいんじゃないかと自分で判断し、監督に申し出ました。

駅伝は「チームの競技」なので「チームの事」を考えたうえでの選択でした。交代を自ら申し出たことに後悔はありません。
 
ただ、当日レースを見て「チームの為に自分が外れるのではなく、チームの為に自分が走らなくては」という責任感を持つようになりました。

成長して臨んだ箱根

――改めて、今年の箱根駅伝(2024年第100回大会)について聞かせてください。前年の経験からこの大会には並々ならぬ想いがあったかと思いますが、いかがでしたか?
 
箱根に向けて1年間練習してきました。故障は多かったですが、精神的な面では成長していたと思います。監督からも「お前が背負い過ぎる必要はない」とずっと言われてました。責任感は持っていましたが、プレッシャーを感じ過ぎることなくスタートラインに立てました。
 
――実際に走っている時の感覚はどうでしたか?

1年目と同じような流れでトップで襷をもらったので「当時と同じように走ろう」と決めて、最初は余裕を持ちリズムよく走っていました。1年目と比べながら、これぐらいだよねと頭の中で想像していましたね。

1年目は後半の下りが伸びなかったのですが、今年は体力もついたので後半もグッと伸び「69分台」につながったのかなと思います!

――どの辺りで「これはタイム(69分台)もいけるな!」と感じましたか?

実は全く気付いていなかったんです。駒澤大学さんとのタイム差だけを気にして走っていたので、69分台を狙えると感じたのは「残り1キロ地点」で・・・(笑)。

監督から「(ラスト1キロ)2分50秒でいったら、69分30秒台だ!!」と言われ「え?まじ?」と思い時計をみたら本当でした。

本当に後続の駒澤大学さんとのタイム差と距離だけを考えて走っていたことによる副産物でした。

回復のきっかけを与えてくれた

――「怪我の治療」について聞かせてください。過去に「PFC-FD™療法」を受けられたことがあるとお聞きしましたが、実際に受けられていかがでしたか?
 
2023年2月末にオーバル中目黒整形外科で、膝のタナ障害に対してPFC-FD™療法を受けました。怪我の影響から筋肉が落ちてしまい、膝周りの故障は長引いてしまったのですが、タナ障害自体は良くなりました。
 
――PFC-FD™療法を受けてからどのくらいで変化を感じましたか?
 
治療を受けてから4~5日後には歩いても痛くないなというところまできましたね。それまでは階段を登ることすら痛かったんですよ・・・。回復のきっかけを得られたので、とても助かりました。

人生の中で今年しか実現することが出来ない「夢」

――話は変わりますが、この春に青学陸上部に入部された1年生は例年以上に有力選手が多いですよね。また、弟さん(若林良樹選手)も入部されましたが、特別な想いはありますか?

速い1年生が集まってきてくれて嬉しいですし、今後の青学が強くなるなと肌で感じている部分はあるのですが、やっぱり1年目って「難しい」の一言に尽きるんですよ。

高校時代に活躍しても大学で躓くことはざらにありますし、またその逆もあります。名前を挙げると、折田(折田壮太選手)や飯田(飯田翔太選手)は高校時代から活躍しており期待されていますが、それをプレッシャーに感じてほしくないですし、しっかり成長して今後の青学を背負っていってほしいです。

弟に関してはどこにいっても比べられる中、よく粘って追いかけてきたなと思いますね(笑)。頑張って成長して4年間やりきってもらいたいです!学年が3つ違いで、今まで同じ中学高校ですが被ったことはないので近くで見れるのは楽しみな反面、兄として背中をしっかり見せて目標となれるような存在で卒業したいと思ってます!
 
――最後に、若林選手の今後の抱負・夢を教えてください
 
中学時代からの「山の神になる」という夢は人生の中で今年しか実現できないものですので、貪欲に「箱根の山の神」を狙っていきたいです!

そのために、具体的な目標として「68分台」はマストかなと思っているので、後30秒更新して、山の神になってチームも優勝して笑顔で終わりたいと思ってます。

インタビュー後記


僕自身、毎年お正月に何気なくテレビの前で「箱根駅伝」を観る1人でしたが、今回お話を伺い、あの大歓声の中「何を想い、感じ、考えていたのか」が凄く興味深かったです。
 
「箱根駅伝」を目指し人生をかけて走る若林選手に触れて、より一層今後の「箱根駅伝」を観るのが楽しみになった武岡でした!


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