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【医療機関インタビュー】「出来る限り多くの選択肢を提供したい」。自然と辿り着いた、山口整形外科医院の治療方針。
こんにちは、営業推進部の野口です。
セルソースは再生医療関連事業を手がけ、医療機関向けに細胞や血液の加工受託サービスを提供しています。
私は営業担当として中四国・九州・沖縄エリアの医療機関さまをご支援しており、今回は長崎県長崎市の『山口整形外科医院』(以下、山口整形)の山口先生と看護師の坂本さんにインタビューさせていただきました。
山口整形はPFC-FD™※を導入いただいている医療機関の一つで、診療・リハビリに加えて手術・入院が可能であり、患者さまに包括的な医療を提供されています。
また、最新医療を積極的に導入されるなど治療を日々アップデートされており、その背景や想いについて詳しく伺いたく、今回のインタビューに至りました。
ぜひ最後までご覧ください。
※セルソースが提供する血液由来加工受託サービスを用いた「PFC-FD™療法」は、自身の血液に含まれる血小板の働きを濃縮活性化して活用する治療方法であり、主に変形性関節症に対する治療として活用されています。
手術も保存療法も。出来る限り多くの選択肢を提供したい
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--山口整形は、山口先生のお父様が1967年に開業されてから60年弱の歴史があると伺っています。山口先生は幼少期から整形外科医になろうと思っておられたのでしょうか。
山口:いえ、医学部には進みましたが、私は研究者になりたかったのです。なので医学部を卒業したあとに米国の研究所に就職し、病理の研究をしていました。プライベートの理由で日本に戻って来ることになり、整形外科の道に進みました。
特殊なキャリアだとは思いますが、病理研究をしていたことは整形外科医としてのパフォーマンスにも大きく役立っています。
私はいまでも自分で顕微鏡を見るのですが、組織片や血液を自分で見ることで、より治療成績などの理解が深まります。また、英語の論文を読むのもとても速くなったからこそ、忙しい中で最新治療の情報収集が出来ています。
--他の整形外科の先生からも「山口先生は本当によく勉強されていて、最新治療の導入も常に一番。本当に凄い」というお話を伺います。そのモチベーションはどこから来るのでしょうか。
山口:まず「モチベーション」という概念が無いですね。「必要だからやる」、それだけです。
当院の特徴として「他の医療機関で治らなかった方」が多く来られます。言い換えると、難治性の病気や疾患を診ることが多いです。
そうなると、当たり前ですが、私のこれまでの知識や当院の設備では戦えない時があります。なので勉強しますし、新しい設備も入れます。ただそれだけです。
-- PFC-FD™療法などの再生医療もその一貫で取り入れられたのでしょうか。
山口:まさにその通りです。
手術が得意な先生は手術に持って行きたがりますし、そうではない先生は逆だったりします。ですが、当院は手術も保存療法も用意していて、患者さまの意向や目標に合った提案が出来ますし、そういう院でありたいと思っています。
例えば、変形性膝関節症を患っていて手術を希望しない方には「対外衝撃波」「ハイドロリリース」、そしてPRP治療やPFC-FD™療法などの「再生医療」や「バイオセラピー」を選択肢としてご用意しています。また、PFC-FD™療法は手術後の予後改善にかなり活用していますね。
「自律的に動く」のが当たり前の組織を
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--これだけ新しく、そして多様な治療が導入されていると、スタッフの方も相当大変なのではないでしょうか。
坂本:正直、凄く大変です(笑)。私は2018年5月に入職しましたが、この6-7年でも山口整形は本当に大きく変わったと思います。
私は学生時代にバスケを、社会人になってからはサッカーをやっていたので「スポーツ外科の普通の看護師」をイメージして入職したのですが、実態は全然違いました。
--そんなにイメージと違ったのに、なぜ続けられたのでしょうか。
坂本:自分がミスをしたりすると、滅茶苦茶怒られます。「くそっ」と思うけど、それで辞めるのは悔しいなと。そう思って頑張っていたら、6年以上経ってしまいましたね(笑)。
でも、ある時いきなり細かい指示が出なくなり、「これやっといて」くらいのざっくりとした指示や依頼だけになりました。その時に「あれ、信頼してもらえたのかな」と思い、嬉しかったですね。
--院内のオペレーションも拝見しましたが、スタッフの皆さんが本当に自律的に動いておられました。何か特別なことをやられているのでしょうか。
山口:当院で「これは私の仕事じゃない」という人が一人でもいると、もう回らなくなります。本当に全員野球が前提の運営なので。そのため、皆が自律的に動けるようになるためのサポートはしています。
例えば勉強会や研究会を開催しています。グループに分かれて2か月後の発表テーマを設定し、各グループで英語の論文を読んで勉強し、当院主催の研究会ウェビナーで発表をさせます。
また、スタッフを私の診察に同席させたりもしています。ある年は理学療法士を同席させ、診察後に彼らの意見を聞きます。彼らに「診察室で何が起きているか」を理解してもらうことで、リハビリの質を上げてもらうことが目的でした。専門分野が違うので彼らの意見が私の参考になることも多々あります。
坂本:私は看護師ですが、資材が足りなくなれば資材調達をやりますし、他のスタッフが困っていたら助けます。資材が足りなかったら私たちの医療がお届け出来ないわけで、「私の仕事かどうか」はどうでもいいことだと思います。
山口:各レベルでの「目標」をしっかり立てて、「役割」を明確に設定すれば組織はうまく回ると思っています。なお、「明確に設定する」ことと、そこに「限定する」ことは全く異なります。
患者さんによる「ゴール」の言語化。これなくして治療計画は立てられない
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--貴院のHPを拝見していて、「ゴール設定」に非常に力点を置かれている印象を受けました。
山口:私は治療を行うにあたって「正しい診断」と「ゴール設定の言語化」の2つが最も重要だと思っています。
長崎労災病院で診療にあたっていた時にスポーツ外科を立ち上げ、多くのスポーツ選手を診ていたのですが、スポーツ選手の治療において「ゴール設定」は当たり前なのです。
「いつの試合に間に合わせたい」「何がいつまでに出来るようになりたい」。それを教えてもらって、そこをターゲットに治療していきます。
ですが、それは一般整形の治療でも同じくらい重要だと気が付いたのです。
--カルテに「希望すること」を書く欄があると伺いました。
山口:はい、例えば「痛みがない生活を送りたい」と言っても、それだけでは何をどこまで治したら良いのかが分からないので、そこを具体的に書いてもらい、また初診時にそこを掘り下げます。
分かりやすいケースで言うと、先日来られた若いお坊さんが「正座が出来るように」と書かれていたのですが、よく聞いてみると「正座を1時間以上出来る状態になる」必要があったのですね。
これは、まだ若いので修行に行く必要があり、修行時は1時間以上正座が出来ないと話にならないと。「正座が出来るように」と「正座が1時間出来るように」だと全く違います。こうやって明確なゴールを言語化すると、良質な治療計画に繋がっていきます。
「頼ってもらえる存在」であり続けたい
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--この山口整形をどのような存在にしていきたい、といった目標や想いはありますか。
山口:質問にストレートにお答えしない回答になりますが、本当に最近、「あ、この仕事をやっていて良かった」と思うようになりました。
この間、行きつけの居酒屋の女将さんが診察室にいて、「どしたん?」と聞いたら、「ずっと言えなかったのだけど、実は肘が痛くて」と。他にも東京で治らなくて当院に来てくれたり、アメリカやインドネシアに住んでいる人がわざわざ来てくれたり。
つまり「あ、頼ってくれてるんだな」と思う機会が増えたのです。
私は佐世保で長く働いていてからこちらに来たので、最初は全然患者さんが来られませんでした。一日二人しか来ないなんてことも当たり前でした。
それでも焦らずに、一切のマーケティングを行わずに頑張ってきたら、毎年来て下さる方の数が増え続けて、今日に至ります。振り返って出来た「道」に気が付き嬉しく思いますし、これからもこれを続けていくだけです。
インタビュー後記
今回は、長崎県長崎市にある「山口整形外科医院」にお邪魔してきました。
山口先生のお話の内容や口調からは「確固たる信念」を強く感じましたが、それ以上に衝撃的だったのは山口先生と坂本さんの関係でした。
坂本さんは先生に対して普通にタメ語で話しますし、食事の場でもイチゴを勝手に取ったり、嫌いな人参を渡したり(笑)。
極めてレアな関係ですが、互いを本当に信頼していることが伝わってくる光景でした。そして、そんなチームだからこそ、山口先生が憂いなく新しい治療を導入出来るのだろうなと強く思いました。
山口先生、そして山口整形外科医院の絶え間ないアップデートに弊社も遅れることなく、ついていきたいと思います。
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※別フロアにもリハビリ室あり