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【獣医師インタビュー】犬の角膜潰瘍治療に新たな光:「イヌ血小板由来成長因子療法」 とは

こんにちは。セルソースで動物医療事業を担当している梶原です。
 
当社は、アニコム ホールディングスグループとともに犬の血液に含まれる血小板の働きを濃縮活性化して活用する「イヌ血小板由来成長因子(cPGF™)療法」の研究開発を行いました。
 
この療法は動物再生医療技術研究組合(PARM)に加入している動物病院にて臨床研究のもと獣医師の判断で診療を受けることができます。
 
今回は、犬の眼科疾患の一つである角膜潰瘍※ に「cPGF™療法」をご活用いただいた関内どうぶつクリニック』の牛草先生と、あかつきペットクリニック』の川田先生にインタビューさせていただきました。
 
※角膜潰瘍とは、外傷や感染が原因で角膜の組織が欠けてしまう病気のことです。詳しくは以下の記事をご覧ください。


牛草 貴博 先生へのインタビュー

牛草 貴博 先生 
関内どうぶつクリニック 院長

院長として診察に携わりながら、酪農大学大学院特任准教授、動物再生医療技術研究組合理事、株式会社12薬局取締役などを兼任し、再生医療の研究にも取り組む。

ーー今回、cPGF™療法を実施されたワンちゃんについて、教えてください。

12歳のボストンテリアです。難治性角膜潰瘍を発症していました。
 
難治性角膜潰瘍は、角膜の表面にある上皮とその下の層(実質部分)がうまく密着できないため、傷が修復されず、目に痛みが続いてしまう病気です。
 

ーーcPGF™療法を検討された理由をお聞かせください。
 
飼い主さまが外科的な処置を希望されなかったためです。最初の治療はヒアルロン酸と抗生物質の点眼処置を5週間続けました。残念ながら改善が見られず、抗炎症効果と組織修復促進が期待されるcPGF™療法をご提案いたしました。

ーー経過はいかがでしたか。
 
10日後ぐらいより急に眼を痛がる様子がなくなってきたと飼い主さまより報告を受けました。約3週間後の検査では、痛みは完全になくなったようで、傷も改善する結果となりました。

ーーcPGF™療法が難治性角膜潰瘍に対してどのように効果を発揮したか、先生のお考えをお聞かせください。 

cPGF™が、角膜の表面にある上皮とその下の層(実質部分)を速やかに接着するよう補助したことにより傷の修復が促進され、目の痛みや不快感が改善したのではないかと考えています。

ーー角膜潰瘍に対してcPGF™療法はどのようなタイミングで実施するのがよいのでしょうか。
 
外科的な処置を行う前に実施することが適切だと考えております。特に、手術の際の麻酔のリスクが高いワンちゃんに対しては、cPGF™療法を実施する価値が高いと考えております。

ーー今後、どのような飼い主さまにcPGF™療法をご提案されていきたいですか。
 
難治性角膜潰瘍は外科的処置が一般的ではありますが、麻酔をかける事に抵抗を持っている飼い主さまに提案していきたいと考えております。cPGF™療法は、点眼だけで再生医療を実施できるので、飼い主さまにとっても非常に意味深いことであると感じています。

川田 学 先生へのインタビュー

川田 学 先生 
あかつきペットクリニック 院長

獣医学の眼科分野にて博士号を取得。以後、複数の動物病院に勤務し、現在はあかつきペットクリニック院長として診療業務に従事。

ーー今回、cPGF™療法を実施されたワンちゃんについて教えてください。
 
14歳のイタリアン・グレーハウンドです。
 
過去に他院で白内障手術を実施されていましたが、網膜剥離により視力が低下しており、日頃から壁などに衝突を繰り返していました。そのため、一般的な点眼治療を実施しても角膜の傷が慢性化している状態でした。

 ーーcPGF™療法を検討された理由をお聞かせください。
 
今後起こり得る穿孔のリスクを考慮し手術を検討しましたが、慢性腎臓病を合併しており手術時の麻酔のリスクがあったためです。そういった中でPARMにおけるcPGF™療法を知り、飼い主さまにご提案いたしました。 

ーー経過はいかがでしたか。
 
cPGF™療法開始後、まだ少し凹みはあるものの、傷がきれいに塞がり、角膜に新たな血管もできず、透明感が戻ってきました。治療を始めて予想していたよりも早く白濁や充血が改善したため、飼い主さまもとても喜んでいらっしゃいました。

ーーcPGF™療法が角膜潰瘍に対してどのように効果を発揮したか、先生のお考えをお聞かせください。
 
cPGF™の点眼により、角膜の表面を覆う上皮細胞の成長が促進されると考えています。その結果、目の痛みが和らぐという効果が期待できます。

ーー角膜潰瘍に対してcPGF™療法はどのようなタイミングで実施するのがよいのでしょうか。
 
早期の段階で一般的な治療をしっかり行い、経過がよくない場合に次の一手として、cPGF™療法をできるだけ早期に行うことが重要と思います。
 
角膜潰瘍は重症化した後に治すと混濁が残る可能性が高くなり、視覚障害が出るリスクがあるため、なるべく早めにしっかり治すことが重要です。
 
ーー今後、どのような飼い主さまにcPGF™療法をご提案されていきたいですか。
 
これまでの治療で改善が難しかったケースや、手術が必要とされるケースに提案していきたいと考えています。手術で早期に治療できる症例もありますが、cPGF™療法は一般的な治療と手術の間に位置する「第3の選択肢」として活用できる可能性があると思っています。

インタビュー後記 

インタビューにご協力いただきました牛草先生、川田先生、誠にありがとうございました。
 
角膜潰瘍は、急速に悪化して角膜に穴が開き、視覚障害を引き起こすこともあるためできるだけ早期に治療を行うことが重要です。
 
cPGF™療法は、PARMに加盟している動物病院であればどこでも受けることが可能です。

ワンちゃんの角膜潰瘍でお困りの方は、ぜひPARM加盟の動物病院にご相談ください。

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