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ベンチャーのHRで試行錯誤していろいろやってみた~第二弾~

こんにちは。HR部長の榊原です。

以前「ベンチャーのHRで試行錯誤していろいろやってみた」という記事で、この3年間のHRでの主な取り組みを振り返りました。今回は、その記事の続編として、前回書ききれなかったことを紹介させてください。

独自の1on1「ワンステ」

前回の記事で、コンディション把握とHR施策効果測定のための取り組みとして毎月パルサーベイを実施していることをご紹介しました。そのサーベイの結果から見えてくる様々な問題に対してどう手を打つかをHRでは延々議論しているのですが、「それって1on1をちゃんとやれば解決だよね」という結論になることが多いです。

ただ、「1on1をちゃんとやる」のが本当に難しい。1on1についての社内アンケートを実施してみたところ、日々忙しくて1on1の時間が取れずつい後回しになってしまい気付いたら何か月も実施できていない、ついついタスクの進捗報告で終わってしまう、そもそもタスクの進捗報告する時間だと思っていた....といった状況であることがわかり、効果的な1on1が実施できていないことが明らかになりました。

そこで、みんなが目的を失わず、迷わずに効果的な1on1が実施できるように、そして社内に確実に浸透させるべく、以下の取り組みを行いました。

業務タスクに関する一対一の打ち合わせと区別するため「ワンステ」とネーミング

ワンステとは“One Step Forward”(一歩、先へ)の略です。「その対話が終わったら、上司も部下も、何かが一歩前に踏み出していて欲しい」という想いと目的を表しています。例えば「成長計画が明確になった」、「相手のことを一段深く知れた」・・・といったことが叶うと効果的なワンステができたと言えます。語呂が良いせいか、今ではこの呼び方がかなり浸透しています。

ワンステ前に更新しておくワンステシートの利用を推奨

ついついタスクの進捗報告タイムになってしまわないように、また、伝えたいことがあるのにいざその場になると伝えられない、といったことを防ぐために、双方(特に部下側が)事前にワンステシートを更新してワンステの時間をむかえることを推奨しています。

ワンステガイドを作成

部下側はワンステが「自分のための時間」であることを意識し、受け身にならずに事前に準備して臨む必要があります。上司側はワンステが「部下のための時間」であることを理解し、8割以上は部下が話している状態を意識してほしいです。こういったワンステの準備と心得を明文化したワンステガイドを作成し、社内向けに説明会を実施しました。

ワンステ実施状況を把握

HRメンバーが各部署のワンステ実施状況を月次で調査し、実施できていない部署にはその原因をヒアリングし、実施できるようにサポートしています。

人生の目標・自身の存在意義(Purpose)、セルソースにいる理由(Mission)は言語化したくない、触れたくないというタイプの方もいるため入力は任意

これだけやって、成果はいかほどか?と言いますと、サーベイのスコアから読み取れることは、着実に成果はでてきている、ただしまだまだ道半ばといったところです。

リーダー研修 ~ Leader Training Cruise ~

当社は、2023年4月~10月に経営層、経営層候補を対象にTeambox社が提供するリーダー育成トレーニングプログラム“Teambox LEAGUE”を導入しました。その理由やTeamboxの方々へのインタビュー記事を過去に掲載しています。

この“Teambox LEAGUE”を参考にして当社オリジナルのリーダー研修を組み立て、社内のリーダーやリーダー候補から選抜された数名が参加しました。期間は約2か月。その名も、“Leader Training Cruise”(略してLTC)です。このネーミングには、リーダーはゴールへ導く船長であること、そしてこのトレーニングは決して途中で下船できないことを表しています。

LTCの特徴は以下の4つです。

・事前・事後の自己評価および360度フィードバックにより自己を見つめなおす
・講義+デスカッションで一緒に参加するメンバーから良い刺激を受ける
・コーチによる1on1
行動目標を立て、毎日の日記でコーチや他のメンバーに出来たか出来なかったかを報告する(だから逃げられない=下船できない)

これを2クール行いました。効果は、トレーニング後のサーベイで測れるわけですが、効果があった者、残念ながらそうでもなかった者、一時効果が見えたものの元に戻ってしまった者がいました。効果に物足りなさを感じているのが正直なところです。3クール目も準備まではしましたが、これまでと同じ内容での実施は取りやめ、内容を見直そうと思っています。

それにしても、なにかと名前をつけて、そして略すのが好きな私たちです(笑)。

日記はSlackのワークフローで毎日投稿

OKRを導入、そしてやめました

OKRとは、Objectives and Key Resultsの略で、四半期毎を目安にした高頻度で設定、上司と部下で対話し振りけることで個人や組織のパフォーマンスを最大限に引き出すための目標設定や管理の手法です。OKRは実現するべき目標や意義(Objectives)を達成するために逆算して生み出すべき成果(Key Results)を設定します。上手く機能すれば非常に優れた手法だと思います。一般的なOKRの説明はこのくらいにして…

当社でも2021年11月にOKRを導入し2年間運用し、そしてやめました。今の当社には馴染みませんでした。理由は以下の2つだと考えています。

製造業の側面があること

当社はいくつかの事業を展開していますが、メインは血液由来加工受託サービスや脂肪由来幹細胞加工受託サービスであり、再生医療センター所属の多くのメンバーが日々、血液由来加工や脂肪由来幹細胞加工に携わっています。もちろん、日々大小さまざまな業務改善に取り組んではいますが、一番大事なのは一定の品質を保ちながら検体を受け入れ、スケジュール通りに製品を出荷し、お客さまへお届けすること。何があってもこれが第一優先です。

OKRは重要な「起こすべき変化」のうち重要なもののみにフォーカスする仕組みですが、変化しないことも重要な製造部門にとっては、どうしてもOKRへの取り組みの優先順位を高く保つことがメンバーの負担になっていました。

非常にスピーディに変化していく組織であること

当社はベンチャーらしく、様々なことがスピーディに変化していきます。数か月前に設定したOKRがあっというまに古くなってしまうことがありました。OKRは一度設定したらそれが絶対ではなく、随時柔軟に見直すことが推奨されてはいますが、そのスピード感にあわせて組織と個人のOKRに手を入れるというのもまた負担だったと思います。

OKRをやめた後の今期は組織の目標に対して個人の目標を立てるか立てないかや、個人がなにを成し遂げたかの把握方法は各部に任せるという方法をとっています。

360度評価ならぬ180度評価

360度評価とは、上司、部下、同僚などの複数人がある人物を評価し、その結果をフィードバックしてそのひとの成長へつなげようとする手法です。当社では過去に対象者を役職者に絞り、ひとりあたりの評価者人数を限定して実施したことがありました。

ですが、人数の関係でよく知らない人が評価者になってしまい意味を成さなかったり、実は多くの部下たちは不満を抱いているのに上司からの評価は良く、たまたま評価者に選ばれた限られたひとからの評価も良いために本人に正しくないフィードバックがされてしまう、ということありました。

そこで、評価者を部下に限定し、部下全員が上司を評価する180度評価を実施することにしました。

部下からは上司が置かれている状況は見えていないことがよくあります。上司が部下の意に反する意思決定をした場合、上司はその理由をきちんと説明したつもりでも、部下は十分に理解できず不満を抱くといったことはよくあります。これを部下の理解力が乏しいせいにしたままでは、部下のモチベーションもエンゲージメントもあがりません。

当社は「部長は部長という業務を担当しているだけで、みんなフラットな関係である」という考え方をしているものの、組織構成としては階層型です。正しい意思決定がなされることを前提として、階層型組織での上司の評価は「部下がどう捉えているかがすべて」だと考えました。

上司には事業推進系のスキルももちろん求められますが、部下が正しく評価することは難しいため、「上司は評価者のモチベーションにどう影響しているか」のみを計測することを目的とした質問に絞りました。また、フリーコメントを多く書いてもらえるように工夫したことで、結果のフィードバックを受ける被評価者(上司)にとって意味のあるものになりました。今後は被評価者の対象を広げ定期的に実施するつもりです。

以上、この3年間のHRでの取り組みの一部を紹介いたしました。これら取り組みの成果か(そうだと思いたい!)、エンゲージメントサーベイの結果は改善傾向にあります。ですが、まだまだ、もっとできることがある、するべきことがあると思っています。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!